10数社のハウスメーカー、工務店、設計事務所でご検討され、理想のPLANに巡り合えないという中で、私たちは施主様とお会いしました。施主様のお望みは、もちろんたくさんありましたが、大きくは3つに集約されていました。
部屋数が確保できない理由は、単純に言うと法的要件である「高さ制限」の影響で3階に部屋が取れないということが要因です、これを単純にクリアするには、建物を地中に潜らせていくしかありません。単純に言えば「3階の部屋をあきらめる、その分地下室を作る」という答えになります。しかし、「地下室」は工事費がかかるばかりではなく、風も通りづらい部屋となります。
「空気や視線が抜ける家」ですが、ご要望の部屋数を無理に作ると、独立性の高い小部屋が集まる家になります。
木造りの家が欲しい、これは柱や梁など木材が表面にみられるインテリアをおっしゃっているのですが、この地域は法規制上、木材の柱梁の露出が禁じられている防火規制がかかり難しいものでした。なかなか理想のプランが出てこないのも、理解できる状況です。
まず、課題1から取り組みます。斜めにかかる高さ制限の中で、3階に部屋を作ると北側の部屋は立つことができません。そこで北側の部屋を南側の部屋より少しづつ床ごと下げていきます。これにより2階、1階も北側のブロックは下がっていきます。大きく南側のブロックと、北側のブロックの高さが違う関係が生まれます。3階建てですので、5層の床の高さが生まれてきます。これを、どう結ぶかが課題となります。
ここで、北と南のブロックの間に、緩和する空間を設けます。いわゆる吹き抜けです。この吹き抜けの間に、南北のブロックをつなぐ階段を設けていきます。この状態で、部屋数を確保した、5層の床を持つスキップフロアの住宅が完成します。
次に吹き抜けを風の道として構成します。最上部には換気窓を設け光を導き風を抜きます。この吹き抜けに面して、個室は室内窓を設けることで、風を通すとともに光を取り、視線も通していきます。
最後に「木づくりの家」のご要望です。法的には木部を何らかの壁在で覆い火から守ることが義務付けられます。そのため木造住宅であっても木が見えないのです。私たちは「燃え代設計」の考え方をご提案し、木部を表すことにしました。
燃え代設計とは、木の表層が火災時に炭化し一定以上木材が燃えないという考え方によるものです。そのため露出させる柱などを計画し予め、炭化する分の厚さ(燃え代)をのぞいても強度上問題が無いよう寸法を決定し、木を見せつつ安全になるよう仕上げていきました。
この住宅では、「5層3階建てという構造」「燃え代設計の採用」などが重なったため、確認申請機関である区と厳しい折衝がありました。しかし粘り強く各種資料や計算結果を提出しながら確認と交渉を進め、最終的には施主様のご要望を認可いただくことができました。
多くの技術的提案を通じ施主様のご要望を満足させた住宅ですが、設計中のエピソードをご紹介します。
設計途中で家の中心の吹き抜けで家全体を暖める「薪ストーブを置きたい」という話が急浮上、薪ストーブを平面図にレイアウト、屋根から突出する煙突について役所と協議(高さ制限に絡むため)などなど課題山積でしたが何とか解決。「どうにかうまくいきましたね。やったー!」と、皆で大喜びしたその夜...事務所に帰ってふと思いました。「薪はどうするんだろう? どこに置くんだろう?」
急遽、3階にバルコニーを追加した案を作成し、持っていきました。今では、課題の代わりに薪が山積みです(笑)
SOU建築設計事務所を選んでいかがでしたか? 丁寧に「作っている」感じが伝わる対応をしてもらいました。最初は、少し頼りない気もしたのですが、全くの思い違いで、役所などとの協議も粘り強く、施主の利益を確保してくれ、満足しています。