お客様のご要望をヒアリングをさせていただき、それに基づいて設計プランをご提案させていただきました。当初お客様では、当設計室以外の他の設計事務所さんやハウスメーカーさんからの提案も比較検討されていました。
私たちの最初のご提案は2階リビング案でした。2階リビングにありがちな1階から2階までの動線が暗くなること、1階の子供たちの個室と2階リビングのつながりなどにも十分配慮した案でした。お客様は、当設計室の案をベースに検討を重ね、私たちと共に家づくりを進めようと決定されました。最終的な決定にあたっては、当社OB施主様をご案内し、当社に対する率直な感想や評価もお聞きいただきました。それによって安心して依頼をいただけたとのことでした。
設計契約後も2階リビング案で5案ほど変更を重ねた頃、施主様から「庭とつながった平屋建てが本当は理想でしたが、東京の限られた土地では難しいですよね...」とのお話が出てきました。実は施主様は、庭とリビングの関係を大切にされていたのです。
施主様は、多くのハウスメーカーなどをまわられるうちに、都心の住宅で南に隣地もあるため日当たりも考えれば2階リビングは当然と言われつづけていたために、最初から無理と考えて要望されなかったのでした。それ以外にも、「北側のお部屋は作りたくない」や「二子多摩川の花火を屋上で見たい」といった希望も、多くの設計事務所やハウスメーカーから無理と言われたとのことでした。
そこで、私たちはリビングで庭とつながり、燦々と光が入るリビングを1階に作れないか考え始めました。子供部屋は2階北側に配置しながら、南の光を入れる、屋上を作り花火の方向を開く。多くの会社が無理だと断定した「常識」への挑戦です。
私たちは考え続けました。何度も敷地に足を運んで考え、そして全く新しい案を作り上げました。
敷地の東南方向には、このお宅の駐車場と隣地の駐車場がありました。これに着目し午前の光は直接1階に取り込み、南隣地の屋根越しに来る光はリビングの吹き抜け上部で取り入れることにしました。実際にどのように光が入るかは、方位や各季節の太陽高度を図面に記入し検討しました。
子供部屋は北側ですが、「北側の子供部屋に南採光」をとのご要望に、「それは難しい!!」何度もあきらめかけたのですが、結果的には部屋の天井を、建物の他の部分より突出させ、ハイサイドライトを設け「廊下や階段」越しに南面からの光を入れることに成功しました。
この工夫が、このお宅のシンボル的な空間「光の階段」として特徴的なものとなりました。
また、屋上から花火を見たいとの要望には、その方向の建物の高さを確認するとともに、打ち上げ場所の方向をプロットし検討しました。
施主様は、しばらく変更案の意味が分からずあずからせてくださいとのことでした。
しばらくして、変更案で行きましょうとお返事をいただきました。無理だと思った案を、粘り強く検討してくれ、どのようなことが起こるかを説明してもらえたので十分納得できた。是非、夢の1階リビングを作りたいとのお答えでした。
その後、窓、設備(照明、コンセントなど)、家具(キッチン、洗面)、色・素材と検討を進め、無事設計も完了しました。
設計完了後は工事費の最終見積もりとなります、こちらのお宅は工事費が当初よりかなり上昇しました。上昇の原因を細かく説明してまいりますと、予想通りとのお話でした。私が設計中お話ししていた「これを選べば増額になります」という項目の一つ一つをきちんとご自分でエクセルに入力し整理されていました。工事費の増減を避けたいのは皆同じですが、なにより「よくわからない増減」だけは避けなければなりません。
工事期間中もいろいろなことがありましたが、完成後は、とても喜んでもらいました。
「夢のお庭と続くリビングですね」と申し上げると、「1階リビングも2階リビング案もどちらと決めつけづに、とことん相談し、両方の良さを比較検討したからこそ、完成した建物にああしたらという迷いなく入居できることが一番の満足」とおっしゃっていただきました。竣工後も、お庭のフェンスのご相談などで時折ご訪問しています。
依頼の決め手は? もちろん、提案内容が素晴らしかったこと、それにも増して、先生のお人柄。真面目で真摯な対応、我々との夢を実現できると信頼しました。
こだわりポイントは? 明るさ、開放感、利便性、+おしゃれな空間・・・全てです。
提案内容は? 予算制約の中で、私達の希望を全て取り入れて頂いた上、対応が丁寧で適切でした。また普通の家では考えられない光の取り入れ方など、すばらしいプランでした。