敷地を拝見したとき、正直驚いたのを覚えています。直角三角形をしたお土地です。
施主様はクリエイターで、(これは後に聞きましたが)お会いしたときは、つくりづらいでしょうと申されましたが、実は「三角だからこそ工夫次第で面白くなる家ができる」とお考えだったそうです。
私は、「隅っこが楽しい家」をテーマにご提案していきました。他のご提案では、建物の隅は切り落としたようなプランばかりだったそうです。
「隅っこ」が豊かになることは何か考えました。そこで思いついたのが次の3つの仕掛けです。
「デン」と「家族ギャラリー」を設けるために、階段もわざわざ鋭角部に配置するという挑戦的な構造としました。
デンは階段の踊り場にある穴倉。アーチの中に黄色い壁で作った、ちょうど一人が入ってすわれるだけのスペースです。子どもの隠れ家に、節供やクリスマス等の飾りに使われています。
「家族ギャラリー」も階段の踊り場にあります。アンティーク調に加工した棚板を渡し、そこのご家族の写真を飾ってもらっています。
このお宅には様々なこだわりがあります。
まず、アンティーク調の家具がお好みのため、キッチン、食器棚は造作で作成したのですが、デザインは取っ手の形状まで相談しました、特に表面は一度きれいに白塗装したものを皆で傷をつけて風合いを出しました。奥様の前で本当にいいんですねと確かめて、がりがり傷をつけました(笑)
玄関の床の2色のタイル張りは、ランダムに色を散らすため、施主様ご夫妻に自ら配置を決めてもらいました。
壁は、健康に良くて傷があじになるものとのご要望で、さいしょから鏝ムラをつけた荒い珪藻土の塗り壁としました。
洗面は脱衣室に置くのが一般的ですが、このお宅では3階のバルコニーに面する廊下スペースにあります。「空を見ながら歯を磨きたい! 季節のいい時はバルコニーに出て磨く」という施主様のお話によるものです。そのため窓も全体に高めに配置しています、空が見たいのです。すこし高めの位置で使いづらくても踏み台に乗るとおっしゃいました。
子供には畳の生活をさせたいとのお話ですが、近年では一般的な薄い畳ではだめで本畳を入れています。
照明のスイッチも、トルグスイッチというこだわり。まさに私達は、施主様の志向される方向に精一杯ついていったという感じです。
そして、打ち合わせがとても新鮮な感じで、楽しかったのも印象的でした。「それは、なぜか?」、多分「皆さんはどうされますか?」とか「普通はどうですか?」ということをあまり話さなかったからだと思います。
お住まいになってからも、何度かお邪魔しますが、いろいろ物が増えていきますが、なるほどこの施主様の感性が一本筋の通った統一感を作っていて、とても素敵な暮らしを感じます。
SOU建築設計事務所を選んでいかがでしたか? 自分もものづくりをしているので「苦労した分、最後には皆で笑える」と思い取り組んで、本当にそうなってよかったです。家族の健康を守りたい気持ちで丁寧に作りました。